yujinkoyamaのブログ

世界芸術家辞典掲載作家 小山右人 Yujin Koyama 小説と絵画作品の紹介など

映画「ある母」

 今年の一番の出会いといえば、なんといっても映画監督兼男優のRyusei氏とのそれだった。言うまでもなく油の乗ったハンサム男、まさにボーゴスの躍進の時に出会えたナイスタイミング。NHKドラマで坂本龍馬の名演を演じた男と言った方がわかりやすいだろう。

 昨晩のプロダクションを賭けた映画新作「ある母」の試写会には人が殺到し、二部に分けても立錐の余地もないほどだった。10分ほどの短編で、人の心をいかに惹きつける映画作品が出来るか、真剣勝負、興味深かった。他の国際映画試写会にも、なぜか縁あってしばしば臨むが、キューブリックヒッチコック風なグロと奇抜さの先陣争いを呈する感もある。中で、アピチャポン のようなユンギアン側の霊的、アジア的なものが席巻しつつある傾向も感じる。
 総体の流れの中でも、昨晩の作品は、小さな病室を巡る人の機微を描いた圭品で、媚びておらず、確固とした存在感を放っていた。ふいにアルベルト・モラヴィアの短篇小説の静謐な空間を想起したりもした。きめ細かく、細部まで行き届かせることに至上の価値を見いだし、魂が宿ることを示しているのが伝わってきて、大変好感が持て、胸の透く思いがした。それは、Ryusei 氏の人柄と感性に抱く心地良い癒しの気持ちそのままでもあった。