yujinkoyamaのブログ

世界芸術家辞典掲載作家 小山右人 Yujin Koyama 小説と絵画作品の紹介など

おはようございます。今朝は、とりわけ私の大きな飛躍となりました単行本としては初発の小説「孵化」についてご紹介したいと思います。

 

小説「孵化」

 北国の街で注目の稀有な秀才高校生の腹部に、周囲を苛立ちと興奮に巻き込まずにはおかない、その原因と思しきエネルギーの核心様の塊が凝縮する。証明するように、彼を中心に円形の座標で、人々の心身の調子を狂わせ長年安泰だった街に、国全体の目を驚かすほどの奇態な事件を立て続けに勃発させる。

 秀才に憑依した怪異な核心は、才ある人にとっては《創造性》を象徴するものらしく、彼自身のみならず近づく人を酩酊させ、踊り狂った挙句に乱痴気騒ぎのまま昏睡へと導く。が、中から、才に恵まれた者には色を糧とし、創作に狂ったように没頭させ、壮大な絵画作品を描かせもした。

 奇想天外な展開に加え、オカルト的、ゴチックロマン風の荘重な文体と描写、南米文学風のマジックリアリズム的突飛な表現も浮き足立たずに解け込んで、盛りだくさんを目一杯企図した、小山右人復帰に賭けた意欲作。その成果あって、フランスの出版社から英語版で、新人賞受賞以来、単行本としては彼の記念碑的処女出版本となる!

 主人公の少年は、自らの身体、小宇宙に宿った核の正体を、代々続く旧家の深奥に眠る先祖の悲劇と狂ったような創造性の噴出にまで遡り、暴くに至る。が、決して解決による幸福がもたらされたわけではなく、むしろ件の核が破裂するきっかけをもたらす羽目になり、小さな街中の人は皆、怪奇な事件と、想ってもみなかった人間の変貌ぶりに遭遇させられていく・・・。

 

 

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小説「孵化」小山右人